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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)5077号 判決 1969年7月24日

理由

請求原因については、原告と被告安川との間に争いがない。

被告会社は、適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから原告の主張事実を自白したものとみなす。

右事実によれば、(一)ないし(三)の仮登記の登記原因はいずれも停止条件付代物弁済契約であるが、(一)の仮登記原因の条件成就(弁済期の徒過)後に(二)の仮登記およびその移転付記登記ならびに(三)の仮登記がなされていること、原告が被告安川に対し昭和四四年四月三〇日に本件建物所有権を取得する旨の意思表示をしていることから、右停止条件付代物弁済契約は、いずれも代物弁済の予約の趣旨であると解される。

ところで、原告は右のとおり代物弁済予約完結の意思表示をしたのであるから、本件建物所有権は昭和四四年四月三〇日に原告に移転したわけであるが、(一)ないし(三)の仮登記に対応する予約完結権は三個存在するところ、同一物について同一当事者間における三個の異つた所有権移転行為が、同時にいずれも効力を生ずることは認められないので、いずれの代物弁済契約が有効に成立したのかを明らかにする必要がある。もしこれを、原告の債権すべてを消滅させる代物弁済契約とするならば、(一)ないし(三)の仮登記の各登記原因とは別個の契約に基づくものといわざるを得ず、原告は何ら仮登記の利益を受けないこととなるから、それは当事者の意思にそうものとはいえないであろう。そうだとすれば、当事者の意思解釈としては、第一順位であり債権額も最も多額の(一)の仮登記に対応する予約完結の意思表示をしたものと解するのが相当である((二)、(三)のそれについては予備的に効力が生ずるにとどまる)。すなわち、本件建物所有権移転の効力は、(一)の仮登記の登記原因たる契約についてのみ生じたものといわなければならない。

ところで原告は、(一)のみならず(二)、(三)の仮登記に基づく本登記をも求めるものであるが、右に判断したとおり、(一)の仮登記に基ずく本登記については理由があるが、(二)、(三)については理由がないことに帰する。

被告会社を権利者とする仮差押登記は(一)の仮登記の後になされたものであるから、同被告に右本登記の承諾を求める原告の請求は正当である。

よつて原告の請求を右限度で認容し、その余の請求を失当として棄却

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